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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁
フト人の気配に気が付いたらしく、主人の甚兵衛は隣の四畳半を覗きました。
「私ですよ」
お茶の仕度をしていたのは、甚兵衛の末の娘のお村、これはまだ十九になったばかり、敵討とは縁の遠い、下町娘らしい利発者でした。
「お茶は後でもよい、少し遠慮をしてくれ」
「ハイハイ」
お村は年寄りどもの物好きに少し呆れたらしく、二つ返事で母屋の方へ引揚げます。
「さア、承りましょうか。鼠の外には、誰も聞いてる者はありません」
甚兵衛は少しおどけた調子で話の先を促しました。
「そう改まると少し極りが悪いが、何を隠しましょう、私の本国は播州姫路、酒井様に仕えて、世にある時は百五十石を食みましたが、――今からちょうど三十一年前、女のことから朋輩の成滝近江と争い、果し合いの末討ち取ってその場から逐電、江戸に潜り込んで、とうとうこの年まで無事に過してしまいました。一緒に姫路から逃出した女というのは、打ちあけて申せば三年前に死んだ女房でござるよ。いやはや若い時というものは、無法なことをするものでな」
藤枝蔵人は、そう言いおわってニヤリニヤリと笑うのでした。
「それはとんだ御馳走様で、――懺悔だか惚気だか判りませんね」