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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁

青空文庫

「それじゃ、せめて一本燗けましょう」

「ヘエ、――変なことがあったもので――」

「まア、八さん、たまにはお酒ぐらいはありますよ。――ツイ先刻、八丁堀の旦那から、心祝いがあるからと、わざわざ一升届けて下さいましたよ」

「そいつは豪儀だ、――さすがに笹野の旦那は気が付くぜ、へッ、へッ」

八五郎はすっかり相好を崩してしまいます。

お静はその間に、銅壺に突っ込んだ徳利を拭いて、八五郎の前へ据えた膳の上へ、そっと載せてやりました。元は水茶屋に奉公していたお静ですが、さすがに夫の留守に、子分の酒の酌までしてやるのを憚ったのでしょう。

「済みません」

「なアに、こっちが勝手なんで、有難えな。ト、ト、ト、散ります散りますと来やがる。へッ、へッ、良い色をしているぜ」

グイグイと喉を鳴らしながら、猪口の手を胸のあたりまで持って行った八五郎。

「待ちな、八」

ガラリと格子が開きました。銭形平次が帰って来たのです。盃を膳へ置くかと思った八五郎の手は、意地汚くそのまま唇へ――。

「あッ」

八五郎の手をハタと打ったものがあります。盃は後ろに飛んで、パッと胸から膝へ飛散る酒。平次の煙草入が飛んで来たのでした。