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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁

青空文庫

日が暮れると、平次の遺骸を板囲いの中から運び出し戸板に載せて、回向院に移しました。江戸中の名ある御用聞手先が二三十人、笹野新三郎と一緒に、それに従ったことは言うまでもありません。

その晩の戌刻半(九時)頃、この一行は回向院の寺内に入り、そこでお通夜が営まれたのです。

同じ夜、子刻(十二時)過ぎ、永代のあたりから漕ぎ上がった伝馬が一艘、浜町河岸に来ると、船頭が舳の灯を外して、十文字に二度、三度と振りました。

師走二十九日、漆のような闇の中に、その光が水を渡って走ると、どこからともなく河岸に集まった人数がざっと二十人ばかり。

「変なとき船が入ったものだね、お首領」

「宵のうちに、永代から合図があってびっくりしたよ、――今頃入る船はないはずだが、春になってから来るというのが、何かの都合で早く入ったんだろう」

そういった囁きが、あちら、こちらに交されます。

「それよ、板を渡してくれ」

「おい」

「酒の荷が先か米の荷が先か」

「明日は大晦日だ、酒の荷を先にしてくれ。三河屋も、長崎屋も来ているぞ」

いつの間にやら、屋号を入れた提灯が二つ三つ用意されました。屈強な若者達が、船から運び出す荷を、陸に待っている人足が、言葉少なに受取って、どこともなく姿を消します。