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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁
「お前さんか、あっしに逢いたいというのは?」
「あ、親分さん、私は悪者に跟けられています。どうしましょう」
「ここへ来さえすれば、心配することはない。後ろを締めて入んなさるがいい」
ただならぬ様子を見て、平次は女を導き入れました。奥の一間――といっても狭い家、行灯を一つ点けると、家中の用が足りそうです。
「親分さん、聞いている者はありませんか」
「大丈夫、こう見えても、御用聞の家は、いろいろ細工がしてある。小さい声で話す分には、決して外へ洩れる心配はない。――もっとも外に人間は二人居るが、お勝手で働いているのは女房で、今取次に出たのは、子分の八五郎というものだ。少し調子っ外れだが、その代り内緒の話を外へ洩らすような気のきいた人間じゃねえ」
平次は砕けた調子でそう言って、ひどく硬張っている相手の女の表情をほぐしてやろうとするのでした。
「では申上げますが、実は親分さん、私は銀町の石井三右衛門の奉公人、町と申す者でございますが」
「えッ」
石井三右衛門といえば、諸大名方に出入りする御金御用達、何万両という大身代を擁して、町人ながら苗字帯刀を許されている大商人です。