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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁

青空文庫

「御苦労だな、――そんなに手荒にしなくたっていい」

刃物の違いを見せつけられた金太は、照れ隠しにこんな事を言って、吉五郎をさし招きました。

吉五郎は四十前後の屈強な男で、大したよい腕ではありませんが、一刻者らしさが、妙に人を煙たがらせます。

「あっしをどうしようというんで、え? 親分」

少し反抗的になっているらしい吉五郎。

「これを見ろ、吉」

その眼の前へ、歎きの母親を少し退かせました。朝陽に照らされた無残な死骸は蔽うところなく、大きく開いた吉五郎の眼に焼き付けられます。

「あッ」

吉五郎の驚きは予想外でした。今までの少し太々しい態度は、一瞬にして消えると、五体の骨を抜かれたように、よろりと下っ引の四本の手の中へよろけ込んだのです。

真っ蒼な顔、――大きく見開いた眼、これは、自分の殺した死骸に直面した下手人の顔でないことは、どんな素人にも、たった一と目で判ります。

「吉、――これを知ってるだろうな」

平次は静かに水を向けました。

「乾――乾物屋のお柳ですよ」

吉五郎は漸く冷静を取戻して、乾いた唇を嘗めながら、これだけの事を言いました。

「誰が殺したか、見当ぐらいはつくだろう」