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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁

青空文庫

治兵衛は急に雄弁になります。利害問題になると、一歩も仮借しない様子が、平次にもよく呑込めました。

「番頭の又六に逢いたいが――」

「店にいるはずですよ」

立って案内する治兵衛を押えるように、

「いや、その前に吉五郎の預けてある道具と、又六の部屋を見せて貰いましょうか」

「ヘエ――」

治兵衛を先に、平次と八五郎はそれに続きました。

納戸に預けておいた吉五郎の大工道具には、一つ一つ吉の焼印が捺してあり、小刀は一挺もありませんが、出そうと思えば、誰でもここから取出せることは言うまでもありません。

「ここが又六の部屋で、――外の奉公人と一緒に寝泊りをしております」

隣の六畳の暗い部屋を、治兵衛は指しました。

唐紙へ手をかけると、建付けの悪いに似ず、心持よく滑って少し荒らした古畳の六畳が、蔽うところなく一と目に見られるのでした。

「荷物を見ても構わないだろうな」

「ヘエ――」

又六の荷物――古い葛籠を押入から出させて、平次は蓋を払いました。

一番上は節用集が一冊、着物が五六枚、それを一枚一枚取出すと一番下に渋紙に包んであったのは、鞘も柄もない、匕首が一口。

「あッ。そいつだ、親分」