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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁

青空文庫

」

「…………」

「もしや、神隠しにでも逢ったんじゃないかという方もありますが、神隠しなら三年五年経って出て来ることもありますが、――あの、この節江戸中の騒ぎになっている、子さらいの手に掛ったら、どうしましょう」

お霜は大きく眼を開いて、ゴクリと固唾を呑みました。忠義者には相違ないまでも、お春に比べると、何となく神経の鈍そうな女です。

「大事なことを訊かなかったが、坊っちゃんは幾つで、名は何と言いなさるんだ」

「七つでございますよ。勇太郎様とおっしゃって、それはそれはお可愛らしいお子さんでございますよ」

お霜は自分の子の事でも言うように誇らし気でした。少し動物的かも知れませんが、とにかく、自分の育てた子を、この上もなく可愛がっていることは確かです。

「お霜さんは江戸に家があるんだろうね」

「ヘエ、大根畑(本郷新花町)に世帯を持っていましたが、亭主の文七がやくざで三年前に別れてしまいました」

「お春さんは?」

「木更津でございます」

「とにかく、やってみるとしよう。子さらいも、長崎や堺や、大坂から流行って来たことで、江戸では品川寄りと深川にあっただけだが、俺の縄張うちへ来ちゃ放っておけまい。