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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁
「坊っちゃまが無事で救い出されなければ、私は生きてはいられません」
と勝気らしいお春が泣くのを、平次はどれほど持て余したことでしょう。お霜の方はあまり愚痴を言いませんでしたが、だんだん痩せて憂鬱になって行くのは、心の悩みが一段と深いせいでしょう。
そのうち人さらいがまた活躍を始めました。春から二た月ばかり休んでいましたが、石井平四郎の倅を皮切りに、だんだん大川筋を溯上って、本所、浅草あたりまで荒らすようになったのです。
「親分、とうとう手に入れましたぜ」
ガラッ八が飛んで来たのは、それからまた二日も経ってからでした。
「和蘭カルタか」
「それがいけねえ、うんすんカルタならどこにもあるが、和蘭カルタとなると滅多にありません」
うんすんカルタは和蘭カルタ(トランプ)の禁制後それを模造した和製品で、平次には意味がありません。
「…………」
「薬種屋か、唐物屋で訊くのが一番だと思って、沈香か古渡りのギヤマンでも買うような顔をして、日本橋の問屋筋を一軒残らず歩きましたよ」
「それは御苦労だった」
「あっしはお上の御用を勤める人間とは見えないでしょう」
「そうともそうとも、そんな目出たい顔をした御用聞が居ようとは、どんな人だって気が付くめえ」