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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁

青空文庫

「…………」

「勇三郎様は佞奸邪智で、甥の鶴松君まで毒害した。それを知って園山の家督に直しては、用人の私が御祖先に相済まぬ、――長い事は言わぬ、たった一年、いやひと月待ってくれ。勇三郎様の悪事を発き、詰腹を切らせて、園山家を泰山の安きに置き、百枝様、乙松様を金助町にお迎え申上げた上、改めて名乗って出て、縛り首なり、なぶり殺しなり、どうでも勝手になってやる」

石沢左仲の言葉は、一つ一つが血の涙のようでした。いつの間にやら正面の襖が開いて、園山家の百枝が、鶴松になりすました乙松を抱いて、これも涙にひたりながら見ているのでした。

「親分さん、引揚げましょう、――父さんも悪かったんですから」

お北も泣いておりました。勝気でも確り者でも、武士の義理堅さには、さすがに打たれた様子です。

「よしよし、お北さんがそう言うなら、あっしは事を好むわけじゃねえ。忠義な人達に免じて今晩は帰るとしよう――そのかわり、このお北を、金助町のお屋敷へ引取って、若様のお側へ置いてやって下さい」

「それはもう、言うまでもない、お北とやらここへ来るがよい」

美しく気高い百枝がさし招くと、お北はもう、前後も忘れて、乙松の側へ飛んで行きました。