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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁

青空文庫

平次は起直りました。春から大した御用もなく、巾着切や空巣狙いを追い廻させられて、銭形の親分も少し腐っていた最中だったのです。

「品川の大黒屋常右衛門――親分も知っていなさるでしょう」

「石井常右衛門の親類かい」

「そんな気のきかない浅黄裏じゃない、品川では暖簾の古い酒屋ですぜ」

「フーン」

「そこの娘――お関というのは、十八になったばかりだが、品川小町と言われるたいしたきりょうだ。手代の千代松と嫁合せ暖簾を分けるはずだったが、近頃大黒屋は恐ろしい左前で、盆までに二三千両纏まらなきゃ主人の常右衛門首でも縊らなきゃならねえ」

「…………」

平次は黙ってガラッ八の長広舌に聴き入りました。この天稟の早耳は、また何か重大なものを嗅ぎつけて来た様子です。

「幸い、池の端茅町の江島屋良助の倅良太郎が、フトした折にお関を見染めた」

「あの馬鹿息子がかい」

「息子は馬鹿でも、親爺は下谷一番の丸持だ。上野の御用を勤めて、何万両と溜め込み、金の費い途に困って、庭石の代りに小判を敷いたり、子供の玩具にしたり」

「嘘を吐きゃがれ」

「それは嘘だが、とにかく、倅に日本一の嫁を貰うんだからと嫌がる大黒屋へ人橋架けて口説き落し、その代り結納は千両箱が三つ、こいつは空じゃないぜ、親分」