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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁
「お前さんは何用があって、そんなところにいたんだ」
平次の問いは峻烈でした。
「私はいろいろ道人様のお世話をしておりますから、明日庵室へ入るというお小夜の様子を見に来ましたが、寅吉さんが出て来たのを見ると、出過ぎたことをするんでもないと思って、そのまま引返しました」
兼松の答えははっきりしております。
「お前さんと寅吉とはよっぽど仲が悪かったんだね」
「ヘエ、――世間では何とか申します。行違いは去年のお祭りの揉め事からで――」
兼松と寅吉と仲の悪いのは、同じ音羽の物持で、両雄並び立たぬためだったでしょう。
「お前さんはお小夜をどう思っていたんだ」
「道人様が側近く召されるのを、かれこれ言っては悪いと思って差控えていましたが、正直のところあまり好きじゃございませんでした」
と兼松。
「寅吉は?」
「寅吉さんはお小夜のところへ繁々通っていたようで、これは町内で知らない者はありません。もっともお小夜は何と言っていたか、そこまでは判りませんが」
「寅吉も庵室へ出入りするのか」
「とんでもない」
兼松の様子では、寅吉は縁なき衆生のようです。
「外にお小夜を怨んでいる者は?」
「算えきれないほどあります。