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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

ことに近頃ちょいちょい姿を見せる浅川団七郎――」

兼松はそう言って、脅かされたように、ゴクリと固唾を呑みました。

「浅川という浪人者は始終ここへ姿を見せるのかな」

「お小夜が殺された晩も、頭巾で顔を隠して、路地の外をうろうろしていた様子でした」

「その浪人者の住居は?」

「そこまでは存じません。ときどき後ろ姿を見て、お小夜に訊いて浅川団七郎という名前を知っただけです。来る日は前もって下女のお米をお使いか、風呂か、遊びに出す様子でした。お小夜は賢い女でしたから、変な浪人者の訪ねて来るのを、誰にも知られたくなかったのでしょう」

越後屋兼松の説明は、こちらで望む以上に行届きます。

「お前さんは、浅川とかいう浪人者に逢ったことがあるそうじゃないか」

と平次。

「たった一度ありました。一と月ばかり前、蒸し暑い日で、さすがに頭巾を冠ってはいられなかったのでしょう。お小夜の家の格子戸の中で、覆面頭巾をヒョイと脱いだのを見てしまったのです」

「人相は?」

「四十前後の良い男でございました。何より色白の顔と、青黛を塗ったような、両頬の青髯の跡が目立ちました」

「外には誰も浅川団七郎の顔を見た者はないだろうな」