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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁

青空文庫

「引越しですよ、私はやはり人形町の方が水に合いそうで――」

「それもよかろう、――ところで、俺もつくづく岡っ引が厭になったよ」

「まア」

「気の毒だがお茶でも貰おうか」

平次は庭から縁側へ廻って、青桐の葉影の落ちるあたりへ腰を下ろすと、お勢はいそいそと立って渋茶を一杯、それに豆落雁を少しばかり添えて出しました。

「お勢、今日一日俺は岡っ引じゃねえ、お前の昔馴染――まア、兄貴か友達と思って話してくれ」

「…………」

平次の言葉は急にしんみりしました。

「俺は、口幅ったいようだが、この間からの不思議な事の経緯を、何もかも知っているつもりだ。最初から話してみよう、――もし違ったところがあるならそう言ってくれ」

「…………」

お勢は首をうなだれました。白粉っ気がないとやはり元の三十前後の大年増ですが、その物淋しい美しさは、極彩色のお勢よりはかえって清らかで魅力的であります。

「駒次郎は、お前の妹のお町と言い交していた。かなり深い仲だったに相違ない、毎晩合図をしては、あの塀を挟んで両方から話したり、笑ったり、泣いたりしていたんだ――それが、大里玄十郎父娘が引越して来ると、駒次郎の心は急にお才の方へ傾いてしまった。