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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁

青空文庫

それが、浪々の身になった倅を誘って、釣に行くというのからして腑に落ちません、――大方?」

「――大方?」

「お屋敷につれ込まれて、御成敗――を」

「あれ、母上様」

言ってはならぬ事を言った加世は、嫁のお関に袖を引かれて、そっと襟をかき合せます。

「日頃お憎しみの重なる倅、どんな事になるやら、心配でなりません。――その上、殿様には、二三日中に江戸御発足、御帰国と承りました。せめてその前に倅の安否だけでも知りたいと思い、嫁と二人、三日二た晩、夜の目も寝ずに心配いたしましたが、年寄りや女では、何の思案も手段もございません」

「…………」

「倅内匠は、今となっては志賀家の一粒種、その命を助けたいばかりに、主家を退転いたしました。それもみんな無駄になりました」

老女は涙こそ流しておりましたが、母性の権化のような、強大な意志の持主でした。主家を退転して三万七千石の大名に楯突いてまでも、志賀家の血筋を護り通そうとするのでしょう。

「お屋敷へ申出でましたところで、剛直な方は斬られ黜けられ、残るは便佞の者ばかり。私風情の訴訟を、真面目に取次いでくれる方もございません。幸い浪宅の家主が、八五郎殿のお知合と申すことで、不躾ながらその縁にお願いに参りました。