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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁
「あ、銭形の親分さん、ちょうどいいところで」
誰やらが飛んで来ました。二十五、六のちょっと好い男、山崎屋の先代に仕えた忠義者万助の倅万吉と後で解りました。
「どうしたんだ、何があったんだ」
八五郎はもう飛込んでおりました。
「坊っちゃんが――私はもう」
その後ろから覗くように、歯の根も合わぬ様子で板の間に立った美しい娘は、万吉の許嫁で、久蔵の娘お染と、――これも後で解りました。
「何か間違いがあったのか。どこに居る」
平次はそれを掻きのけるように、飛込んでおります。
一団の人間は、何とはなしにド、ド、ドドと奥へ流れ込みました。隠居勘兵衛の棺を据えて、型のごとく飾った奥の八畳の隣、納戸代りに使っている長四畳には、当主勘五郎の倅勘太郎、たった十歳になったばかりの一粒種が、無慙な死骸になって横たわっていたのです。
父親の勘五郎と、母親のお常の悲歎は眼も当てられません。
「勘ちゃん、死んではいけないよ、勘ちゃん、――お願いだから気を確りしておくれ。おっ母さんだよ、判るかい、――誰が一体こんな眼に逢わせたんだえ、勘ちゃん」
抱いたり、揺すぶったり、頬摺りしたり、お常は半狂乱の態ですが、勘太郎はもう息も絶え絶え、脈も途切れて、死の色が、町の子らしい華奢な顔に、薄黒い隈を描いて行くのです。