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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
ぼくは研究家でなく作家である。やがて壇ノ浦を書いても、そんな神秘な世界までは書かない。御神体めいた遺物の写真やら古文書など輸送してくる向きもあるが、それだけはその人にとって勿体ないだろうからやめてもらいたい。よく「御一覧の後は返送してくれ」とも書き添えてあるが、ぼくは物を失くすのがいたって上手なたちだから、どんなありがたそうな物でも御返送の保証はできない。
この新年号第一回は、一ノ谷合戦から、次の屋島合戦へかかる半年の中間期を、義経の周囲から書き出してゆく“序の曲”となっている。
ただよう平家は、これからが、いわゆる平家物語の哀々たる人間詩を高く奏でながら末路の一すじをとってゆくのであるが、勝者の源氏方にも、義経の行動や頼朝の家庭を中心として、もう盛者必衰の芽が育ちかけていた。古典の筆者はじつに苛酷なほど現世現実なるものを冷視する。といって、ただのむなしい虚無ではない。東洋的な身の処置と生き方は切々と古典の筆者もその行動に希求してやまない風がある。余りに現実に固着して身うごきも心の窓も放たれない現代の読者には、古典がもつ人間苦解脱の悲願と、今日の平和の希いとを考えあわせて、時に夜空の星と語るような思いもされるのではあるまいか。