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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
――捨てはてゝ身はなきものと思へども雪のふる日は寒くこそあれ――の歌は、そのおりの作といわれている。山家集の歌を私は余り好きでないが、この歌は私の愛誦歌のひとつである。
この回の「大原御幸」は、古典平家物語では、もう一章の「六道」とあわせ、いわゆる有終の美の、完結編となっている。
だが、大原御幸のことは、吾妻鏡とか玉葉とかいう類の史書には、何も根拠がない。ただ、承久四年に書かれた僧慶政の随筆、「閑居友」に――建礼門院おん庵にお忍び御幸の事、という短文がある。それを取材にして、平家物語の著者が、あのような大尾の大文章を物したものだという。とすると、古典平家の著者も、よほど小説的構成と空想力に富んでいた人かと思われる。
しかし、承久以前に、大原の女院の生活を、もっと身近な女性が、当時において、すでに書いていたものがあった。それは平ノ資盛(重盛の次男)の恋人だった右京大夫ノ局である。彼女の歌集「建礼門院右京大夫集」には、これも短い憾みはあるが、一日、人目を忍んで大原の閑居に女院を見舞った歌やら感慨がしるされている。
あれこれ考えると、大原の女院の許へも、前述の女性や後白河のみでなく、密かにはずいぶん人も訪ねていたろうと思われる。