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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
が私は、静の身柄一切を預けられた安達清経が、これを沖の闇から世間の闇へ、密かに助け落したということにし、あえて伝奇小説的な解釈をとった。正直にいえば、私には、いくら頼朝がしたことでも、どうにもこのことがいやなのである。「君命で棄てさせた」とはあるが「殺した」とは記録にもない。そこに作家の空想を容れうる余地は充分ある。ぼくの空想が否定される確証は何もない。ここからあの辺の小説は編まれているものである。
妊婦の本能、妊娠中の生理などは、どうも男性には実感がもてない。そこでよく、女房に訊いたものである。書く上のことで、女房に教えを仰いだのは初めてだった。
久しく出さなかった西行法師を、ここで書こうという意図は前々からの設定だった。年表にも――僧西行、鎌倉ニテ頼朝ニ会フ――と見えるその事蹟は、じつに静御前始末の直後であった。しかも八月十五夜という日なので、そのまま小説的な宿縁をも、もっている。
西行を追って、なお書いて行くと、余りに横道へ逸れるので、またひとまず、紙面で別れたが、西行の旅は、あれから武蔵国葛飾郡の、今の幸手の辺にかかってゆく。そこで冬のころまで病に臥す。