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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

Read 三国志(七) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.

N1 · advanced · modern kanji and kana · 371,916 characters · 744 screens

Aozora Bunko

休戦

一

しかも董襲の兵船は、河の中で沈没し、そのほかの兵船も、帆を裂かれ、彼方此方の岸にぶつけられ、さんざんな目に遭ったところへ、新手の魏軍が、徐盛の兵を包囲して、その半ばを、殲滅してしまった。

「あれ、救え」

と孫権の指揮をうけて、陳武が呉陣から馳け出して来ると、魏の一軍が、堤の蔭からつと起って、

「ひとりも余すな」と、またまた、ここに小鉄環を作って、みなごろしを計った。この手の大将は、漢中から従ってきた魏軍の中では新参の徳だ。

かくて、この荒天の下、呉の旗色は、急に悪くなって、今は、総敗軍のほかなきに至ったが、若い孫権は、

「何事かあらん」

と、自身、中軍を引いて、濡須の岸へ、繰りだしてきた。ところがここには、張遼、徐晃の二手が待ちかまえていた。

休戦

一

曹操は百戦練磨の人。孫権は体験少なく、ややもすれば、血気に陥る。

いまや、濡須の流域をさかいとして、魏の四十万、呉の六十万、ひとりも戦わざるなく、全面的な大激戦を現出したが、この、天候が呉に利さなかったといえ、呉は主将孫権の軽忽なうごきによって、その軸枢をまず見失い、彼自身もまた、まんまと張遼、徐晃の二軍に待たれて、その包囲鉄環のうちに捉われてしまった。