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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

Read 三国志(七) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.

N1 · advanced · modern kanji and kana · 371,916 characters · 744 screens

Aozora Bunko

二

二

即位の後、玄徳は、ふたたび表をもって、その趣を天子に奏した。

先に都へ使いを立てて、捧げた表は、諸葛孔明以下、蜀臣百二十人の連署をもって奉上したものであり、後のは、劉備玄徳の認めたものである。

表はいずれも長文で、辞句荘重を極めている。朝廷はその秋ただちに、劉備玄徳にたいして、

「漢中王領大司馬」の印綬を贈った。

「なに、むかし蓆を織っていた凡下が、ついに漢中王の名を冒したというか。憎むべき劉備の不遜、あくまで、この曹操と互角に対峙せん心よな」

魏王曹操が、ために大きく衝動をうけたことは、いうまでもない。

「起てよ、わが百万の鉾刃。――何ぞ、蜀の傍若無人なる。彼をして無事に、漢中王の名を僭称させておいては、身禁門を擁護する曹操として、何の面目やある」

魏王は、獅子吼した。

時に大議事堂に満つる群臣の中から起って、

「否とよ大王、一旦のお怒りに駆らるるは、上乗に非ず、すべからく蜀の内部に衰乱の兆すを待って、大挙、軍を向け給え」と、いさめた者がある。

諸人が、何人かと見れば、司馬懿、字は仲達、近ごろ曹操の側臣中、彼ありと、ようやく認められてきた英才である。