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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
Read 三国志(七) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.
N1 · advanced · modern kanji and kana · 371,916 characters · 744 screens
冬将軍
一
蜀は仮借なくこれを追い込み、崔禹の首を刎ねて、いよいよ威を示した。そして序戦二回の大敗報は、やがて呉の建業城中を暗澹とさせた。
「王、さまで御心をいためることはありません。呉建国以来の名将はすでに世を辞して幾人もありませんが、なお用うべき良将は十余人ありましょう。まず甘寧をお招きなさい」
宿老張昭は励ました。
冬将軍
一
冬が来た。
連戦連勝の蜀軍は、巫峡、建平、夷陵にわたる七十余里の戦線を堅持して、章武二年の正月を迎えた。
賀春の酒を、近臣に賜うの日、帝玄徳も微酔して、
「雪か、わが鬢髪か。思えば朕も老いたが、また帷幕の諸大将も、多くは年老い、冬の陣も耐うるに徹えてきた。しかし関興、張苞の若いふたりが役立ってきたので、朕も大いに気づよく思うぞ」
などと述懐した。
するとその日の午過ぎ、
「黄忠がわずか十騎ばかり連れて呉へ投降してしまった」という風聞が伝わった。
帝玄徳は告げる者に笑って、
「いや黄忠は今朝ここにおった。さだめし老気を励まして呉へ討ち入ったものであろう。朕の述懐こそ心なき呟きであった。――あわれや彼も七十の老武者、過ちさせては不愍である。関興、張苞、すぐ行って彼を救え」