Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
Read 三国志(七) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.
N1 · advanced · modern kanji and kana · 371,916 characters · 744 screens
二
二
関羽の死後にはいろいろな不思議が伝えられた。彼の武徳と民望が、それを深く惜しみ嘆く庶民の口々に醸されて、いつか神秘を加え説話をつくり、それが巷に語られるのであろう。とにかく種々な噂が生れた。
荊州の玉泉山に、普静という一老僧がいる。これはもと、水関の鎮国寺にいた僧で、関羽とは若い時代から知っていた師であり心友であったという。
近頃。この普静和尚が、月の白い晩、庵のなかで独り寂坐していると、
「普静普静」
と空中から人の声がして、
還我頭来。還我頭来。
と二度まで明らかに聞えた。
仰いでみると、雲間に関羽の顔がありありと現れ、右に周倉、左に関平、そのほかの将士も従っていた。普静は声をあげて、
「雲長関羽、いま何処にあるか」と訊ねた。
すると空中の声は、いとも無念そうに、
「呂蒙の奸計に陥ちて、呉の殺に遭えり。和尚、わが首を求めて、わが霊を震わしめよ」
と答えた。
普静は起って庭に出で、
「将軍、何ぞそれ迷うの愚を悟らざるか。将軍が今日まで歩み経てきた山野のあとには将軍と恨みをひとしゅうする白骨が累々とあるではないか。桃園の事はすでに終る。いまは瞑して九泉に安んじて可なりである。