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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
Read 三国志(七) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.
N1 · advanced · modern kanji and kana · 371,916 characters · 744 screens
と、偵察させた。
「西河に、竹の浮橋を架け、南の岸にも、北の岸にも布陣している按配です。北岸には、河を濠として、城壁まで築いているんで……」という手下の報告だ。
「ははあ。俺が瀘水でやった布陣をそのまま真似していやがるな」
野性は驕るに早い。そして従前の敗北はすぐ忘れている。それに新しく連邦九十三甸の加勢を得ているので、闘志満々だった。
「どれ。ひと泡吹かせてくれようか」
軍を進めて、すなわち孔明の築陣していた西河の南をうかがった。
赤毛の南蛮牛の背に、緬甸金襴を布いて花梨鞍をすえ、それにまたがった孟獲は、身に犀の革の甲を着、左に楯をもち、右手には長剣を握っていた。正に威風凛々である。
たまたま、南岸にある蜀兵の各隊を、四輪車に乗って巡閲していた孔明は、
「孟獲が大軍をひきいて近づきつつあります」
と、部下から聞くと、
「すわ疾風雲だ。濡れないうちに早く逃げろ」
と、急に道をかえして、本陣へ急ぎ帰った。
嗅ぎつけた孟獲は、
「しめた。追いつけるぞ」と、間道を通って、突如間ぢかへ、追撃して来た。
――が、危うい一歩で、孔明の軍は陣門の内へ奔り込み、あとは厳しく閉めて、敢えて戦わなかった。