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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Read 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 195,479 characters · 394 screens
こがれる心
はいって来たのは料理人、やはり仲間の一人である。
「イスラエルのあねご、お客様で」
「え、私に客だって? おかしいねえ。だれだろう?」
「立派なお武家様でございますよ」
「あっ、驚いたなあ、もう来やがった」これは忠三のつぶやきである。
こがれる心
イスラエルのお町を訪ねたのは、ほかならぬ袴広太郎であった。帳場の前へたたずみながら、ジリジリとして待っている。
「逢わなければならない。どんなことをしても。まだかなまだかな、どうしたんだろう?」
五人の不気味の侍が、ジロジロ見ているのにも気がつかない。
「どうしても逢ってお願いする。是が非でも納得させなければならない」地団太を踏むばかりである。
発狂ではござらぬ。呪縛でござる。さよう島原城之介のな。さがして城之介にお逢いなされ。呪縛を解くようおたのみなされ。お京様の狂乱はなおりましょう。その節巻軸を奪い取り、当屋敷へご持参なさい。お京様をお渡し致しましょう。……こういう天草時行の言葉を、ほとんど夢中で聞くようにして、巴御殿を飛び出したのは、今日の午前のことである。
何より真っ先に訪ねたのは、懇意の与力勘十郎の屋敷で、広太郎はこういってたのみ込んだ。