Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

Read 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 195,479 characters · 394 screens

Aozora Bunko

土牢の中

と眼を見張ったが、「何とお館にはご返辞を?」

「いうまでもない。承知したとな」

「これはごもっともに存じます」

「ついてはその方大儀ながら、すぐに参って取り計らってくれ」

「かしこまりましてございます」

退出をした牧野兵庫、間もなく大納言家の裏門から、一挺のかごが走り出た。

見台に向かった紀州頼宣、読んでも意味がわからないらしい。

「町姫、町姫、可哀そうな娘! あれの母さえ……尋常であったら……」眼頭に涙がたまったらしい、指で押さえたものである。

その間もかごは宙を飛ぶ。

土牢の中

深々とふけた夜の江戸、そこを駈けゆく一挺のかご、まるで流れる星のようだ。いったいどこへゆくのだろう? 四谷を過ぎ、市ヶ谷を過ぎ、牛込の方へ走ってゆく。

その牛込の榎町に、大名屋敷を思わせるような、立派な屋敷が夜空をぬき、静まり返って立っていた。

その屋敷の長廊下を、二人の武士が歩いて行く。一人は雪洞を片手に持ち、一人はむちを持っている。顔色あおく二重ひとみ、切り下げ髪を肩にかけ、法眼袴をはいたのは、館のあるじ由井正雪、もう一人は門下の鵜野九郎右衛門、足音を忍んでシトシトと歩く。廊下が尽きると切戸口、そこを開けると石の階段、二十段ぐらいはあるらしい。