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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Read 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 195,479 characters · 394 screens
奇怪な客
家へかつぎ込んで介抱すると、パッチリ眼を開けたが物をいわない。しかし事件がこれだけなら、さして問題でもなかったのだが、この後が非常に悪かった。
奇怪な客
というのは数日後、衣裳美々しい立派な武士が、袴広太郎を訪れて、こんなかけ合いをしたからである。
「それがし事は西国の武士、築土新吾と申すもの、突然参上無礼の段は、特にご容赦にあずかると致し、早速ながら申し入れます。うけたまわれば貴所様には、昨夜掃除町の方面にて、目下評判の人攫いを、からめ取られたと申すこと、しかとさようでございますかな?」
丁寧なようなところもあれば、傲慢なようなところもある、かなり不快な態度口調で、まずその武士は口をきった。
「いかにもさよう」と広太郎、負けずに不作法に返辞をする。
「それがなんとか致したかな?」
「いや、お手柄でございましたな。――ところで甚だ失礼ながら、あの人攫いは容易ならぬ手きき、なかなかもって普通の事では、取りおさえることは出来ませぬ。いかが致して貴所様には、生擒り致してございますな?」
「木刀で脳天をくらわせてござる」
「ほほう、木刀で。それは不思議。では貴所様には、あの人攫い、昨夜あの辺を襲うということを、あらかじめご承知でござりましたかな?」