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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Read 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 195,479 characters · 394 screens
漂泊
朱舜水と光圀の一行である。
「これは珍しい! 死蝋がある」こういったのは朱舜水、滝壺をのぞいての言葉である。
「それにもう一つ修験者の死骸が」こういったのは水戸光圀。
「滝のうしろで人声がします。お爺さんの声と娘さんの声が」
こういったのは君尾である。
朝日が上った。鬨の声がした。正雪、時行の連合軍が、木地師の郷へ攻め込んだらしい。と、木地師の郷にあたり、すさまじい爆発の音がした。つづいて立ちのぼる黒煙り! しかしこの頃木地師の一隊は千里のあなたを走っていた。
漂泊
富士見を離れる十里の地点、木地師の大軍が走ってゆく。先に立ったは将右衛門、左右に二挺の駕籠が行く。左の駕籠にはお京様、右の駕籠には広太郎、のどかな様子をして乗っている。その後から行くものは、男の木地師、女の木地師、老人、子供、それから家畜――馬や犬やにわとりや! それから荷車、それから小荷駄、総勢すべて五百人、二列縦隊、トットと走る。みんな陽気で元気がよい。馬のいななき、犬の吠え声、鶏の羽ばたき、子供の叫び声、みんなみんな活気がある。女の笑い声、賑わしい。男のしゃべり声、勇ましい。裾野は広い、草は黄色い、あちこちに櫨もみじの叢がある。