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らんとうばのてんにょ
卵塔場の天女
泉 鏡花
Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens
吃驚して、ははは。大丈夫、危険はありません。父が手造りでしてね、屋根で育てたんですが、少々得意でしてね、その枝の撓った、糸咲の大輪なんぞは、大分御自慢でしてね、人様に見せたいんだが、置どころが外にありませんから。」
老人はまたほたりと微笑んだ。息子に、今年の春、嫁が出来て、すっぱりと店を譲ったので、隠居仕事の気楽さに、永年の望みだったのを、今年はじめて苗から育てた、と言うのである。
「お楽みですな。」
「何の……あんた。」
「姉さんは?」
八郎は息子を見返った。
「……ええ、台所に――お、ちょっと。」
「いらっしゃいまし。」
すっと、そこへ、友染模様が浮出たと見ると、店口の敷居へ、結綿島田が突伏した。
「やあ、これは、これはどうも、……何分どうぞ、唯今、はじめまして、おめでとう。お正月のようだ。」
と八郎は一人で照れて、
「いずれ更めて御挨拶を――何は、……姉さんは、お母さんは、……お悦さんは?」
と、やや忙込んだように云った。私は、はじめからその心を察し得た。留守ではないか、私もちょっとさみしかった。そうして、店の隅なる釣棚の高い処に、出額で下睨みをしながら、きょとりと円い目をして、くすりと笑う……大な、古い、張子の福助を見た。