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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens
「ああ、おいらが遠方の人へとどけにいくんだ」
「ではいましがた、鷲の上にのっていたのは?」
「おいらだよ、アア、喉がくるしい」
「えッ、そのほうか」
とびっくりして、竹童をだきおこした蔦之助は、しばらくしげしげとかれの姿をみつめていたが、やがて、松の根方へ腰をおろして、心からこのおさない者に謝罪した。
「知らぬこととはもうせ、飛んだ粗相をいたした。どうかゆるしてくれい、そこで、あらためて聞きたいが、御身はその手紙にある果心居士のお弟子か」
「そうだ……」竹童も岩の上にあぐらをかいて、腰のふくろから薬草の葉を取りだし、手でやわらかにもんだやつを踵のきずへはりつけている。
「ではさきごろ、日吉の五重塔へ登っていたのも居士ではなかったか、恥をもうせば、里人の望みにまかせて射たところが、一羽の鷺となって逃げうせた」
「おじさんはむちゃだなあ、おいらのお師匠さまへ矢をむけるのは、お月さまを射るのと同じだよ」
「やっぱりそうであったか、いや面目もないことであった。ところで、さらにくどいようじゃが、そちの持っている書面にある加賀見忍剣ともうすかたは、ただいまどこにおいでになるのか、また、たずねるお方とはどなたを指したものか、山県蔦之助が頭をさげてたのむ。