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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens

Aozora Bunko

白鳥の予言

一

オオ、苦しめ苦しめ! 苦しまぬ者はみがかれぬ。八神殿の八柱の神々、あわれ竹童を、このうえとも苦しめたまえッ」

祈るがごとく、吠えるがごとく、雷神の滝の岩頭に、果心居士の声がこうひびいた時である。

「あッ――」

と、いうと鞍馬の竹童。

ドウッ――と鳴る滝津瀬の音を、さかしまに聞いて、居士の手から闇のそこへまッさかさまに投げこまれた。

白鳥の予言

一

枯れ木をあつめて焚いた燃えのこりの火が、パチパチとわずかな火の粉をちらし、一すじのうすじろい煙は、森の梢をぬけて、まっすぐに立ちのぼっていた。

その火のまわりを取りまいて、夜の明けるのを待ちさびしげに語りあっている三人の武士。

あかき光を正面にうけて、薪束のうえに腰をかけている影こそ、まさしく伊那丸であり、その両側にそっているのは、木隠龍太郎、加賀見忍剣、いつも、すきなき身がまえである。

「若君。待つというものは久しいもの、まだなかなか夜が明けそうもござりませぬな」

「そちたちは、火にぬくもったところで、少しここでやすんではどうじゃ」

「いや、なかなか寝られるどころではございませぬ」

こういったのは忍剣である。

「夜明けと同時に、天ヶ丘をくだる呂宋兵衛の列を待ちうけ、勝頼公のお乗物を、首尾よくとるかいなかのさかい。