Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens
ここは街道衝要なところなので、甲府へいくにも南信濃へはいるにも、どうしても、通らねばならぬ地点になっている。
「おお鳥刺しだ」
と、部落の者たちは、また才蔵を取りまいて、裾野のようすをくどく聞きたがった。けれど才蔵は、これから安土へ昼夜兼行でかえろうとしている体、裾野におけるちくいちの仔細は、まず第一に、秀吉へ復命すべきところなので、多くを語るはずがない。
「さあ、ふかいようすは知りませんが、なにしろ、裾野はいま、人穴城の火が、枯野へ燃えひろがって、いちめんの火ですよ、そのために、徳川勢と武田方の合戦は、両陣ひき分けになったかと聞きましたが、人穴城から焼けだされた野武士は、駿河のほうへは逃げられないのでたぶん、こっちへ押しなだれてきましょう」
「えッ、野武士の焼けだされが、こっちへ逃げてきますって?」
「ほかに逃げ道もなし、食糧のあるところもありませんから、きっとここへやってくるにそういありません。ところでみなさん、わたしがここを通ったことは、その仲間がきても、けっしていわないでくださいまし、ではさきをいそぎますから――」
と、可児才蔵はほどよくいって、いっさんに、部落をかけだした。