Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens

Aozora Bunko

「まことの姓はあかしませぬ。ただみずから、果心居士と異号をつけております。じつはこのたびのことも、まったくその先生のおさしずで、織田徳川が甲府攻めをもよおすと同時に、拙者は、六部に身を変じて、伊那丸さまをお救いにむかったのです。それがこの不首尾となっては、先生にあわせる顔もないしだいだが、天下のこと居ながらにして知る先生、またきっと好いおさしずがあろうと思う」

「では、どうかわたしもともに、お供をねがいまする」

「異存はないが、さきをいそぐ、おしたくを早く」

小文治は、家に取ってかえすと、しばらくあって、粗服ながら、たしなみのある旅支度に、大小を差し、例の朱柄の槍をかついで、ふたたびでてきた。

「お待たせいたしました。小船は、わたしの家のうしろへ着けておきましたから……」

という言葉に、龍太郎がそのほうへすすんで行くと、小船の上には、ひとつの棺がのせてある。

武士にかえった門出に、小文治は、母の亡骸をしずかな湖の底へ水葬にするつもりと見える。

と、あやしい羽音が、またも空に鳴った。はッとしてふたりが船からふりあおぐと、大きな輪をえがいていた怪鳥のかげが、潮けむる遠州灘のあなたへ、一しゅんのまに、かけりさった。