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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens
長安は奉行の床几席へ大股にあるいていって、あたりの家臣と額をあつめ、また徳川家の者がひかえている溜りへ使いを走らせた。
見物はそういう内情は知らない。ただ、床几席に奉行のすがたが見えたし、検証の位置に鐘巻一火がひかえたので、
「さあ……」
と、にわかに空気をかえて、つぎの試合を期待した。
「うまくいったな」
「思う壺と申していいな」
龍太郎や小文治は、顔を見あわせ微笑した。長安は空部屋をさがして支度せよといったが、見渡したところ、みなどうどうたる大名紋の幔幕ばかりで、そんなところはありそうもなく、五人の勇士も、それには、ちょッと立往生していると、
「ご浪士、ご浪士」
と、うしろで、呼ぶ者がある。
見ると、さいぜん、栴檀刀をハネ飛ばした、すばらしい槍の使い手、可児才蔵であった。
「支度の場所におこまりのごようす、おいやでなくばこの幕のうちへ」
と、五三の桐のとばりをあげて、ニッコと五人を目でまねいた。
紅白の鞠盗み
一
だれかは知らぬが、おりにふれて、相身たがいの武門のなさけ、ゆかしくもうれしい、人の言葉である。
飛び入りというのでもなく、意外なことから、ここに咲耶子の身をとるか、渡すかの試合となった一同が、支度の場所もなくとうわくしているところへ、五三の桐の幕のかげから、