Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Read 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 56,947 characters · 114 screens
南河内千早赤坂村の彼の故郷へ立った。そして、ない物ねだりの史蹟一巡をこころみる。――前述の豊田武氏、杉本画伯、社の数氏に加え、観心寺の下で待ってくれた永島住職や小柴河内長野市長、ほか土地の人々も入れて、ちと仰山な人数になる。
寺宝の文書や内陣の諸仏を見てから、正成の首塚、建掛ケの塔の辺りに立つ。ここで得たものは、それらの既存の遺物よりも、正成一族や和田氏その他の近郷武士が、この自然と伽藍に拠って、何を考え、何を志向していたか、当時の彼らの生態やら生き谺がそこはかとなく心に響いてくることだった。
南北朝の世頃、四十六坊といわれた山門下の寺元村の茶店前には、観光バスや修学旅行の学生が群れをなしている。
「楠木氏の菩提寺の中院は、あの辺です」と、永島住職が指さす。水は見えないが、崖下は金剛山の西麓からくる石見川である。奥からは、良質な檜材が出る。鎌倉時代には、ここの檜が都へ送られ、仏師の彫刀に刻まれたらしい史証もあるとか。で、観心寺には、檜ノ尾山の山号もある。
菊水紋の話になる。
楠木家の菊水ノ紋については、郷土の間でも、諸説紛々で、一定はないらしい。朝廷から賜わったとするのが従来多い説だが、ここの郷里には、おもしろい口碑がある。