Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Read 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 56,947 characters · 114 screens
その四
円覚寺の黄梅院で、暮れかける。お訪ねした辻雙明氏は御不在。だが、ここには鎌倉時代そのままな谷の幽翠がしいんと残っていた。また、いただいたお茶に水の良さも思われた。
辞して出ると、行きずりの続灯庵の和尚が「よい物をお見せしよう」と、先に立つ。ついて行くと、正続院の一庵の裏庭で、艶なる牡丹十数株が、薄暮の中に、見る人もなく妍を競っているのだった。和尚は、われらのために牡丹を見せたのか、牡丹のために客引きとなって私たちを連れ込んだのか。これは一案の提唱になりそうである。が、山門へ来ると「左様なら」と、あっさり一灯の洩れる房のうちへ、別れ去った。(三三・五・九)
その四
現代小説は身軽らしいが、私の仕事はいつも史料と同居している。そのため、とんと億劫にしていたが、前月末、久しぶり関西方面へ旅行した。
目的は、そろそろ登場人物として腹案中の“楠木正成”とその郷党の地、南河内からあの附近の史蹟を、足で歩いてみることだった。
ちょうど、親鸞七百年忌をかねた相愛学園の記念大会もあって、それへ出る一日も日程に組み入れ、名古屋駅で杉本画伯を加え、社の学芸子などあわせて、四、五人で京都に降りる。