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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Read 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 56,947 characters · 114 screens
その十
――毎日丹精に、切リ抜キ保存をし続けておられる方は、恐縮だが、御訂筆を加えておいていただきたい。
要するに「太平記」は、かつての日本国内の兄弟喧嘩の小説である。今も「山家集」の歌のようにはなれない日本か。
春となる桜の枝は何となく
花なけれども
むつまじきかな
次のは「源三位頼政家集」にある歌だが、ことし御成婚の正田美智子嬢に寄せたような歌なので、載せておく。
みやま木の
その梢とも見えざりし
桜は色に現はれにけり(三四・一・一)
その十
笠置落ちや赤坂城の殺伐な筆に飽いたので、「群雀帖」の初めに、兼好法師の小僕の命松丸と雀のことなど書いたら、それから妙に私は雀が目につき出してきた。考えてみると、この東京なども、戦後人口は急増したが、雀はすっかり減っている。
品川区に住んでいた頃、品川の雀は色が黒いなと思ったことがある。煤煙のせいであろう。赤坂へ越して来たら、赤坂の雀はまだ少しはきりょうがいい。奥多摩を考えたら、奥多摩の雀はほんとの雀色をしていた。
田園では毛ナミもよし囀りもいい雀と思って選挙しても、東京でももっとも空気の悪い国会周辺に遊ぶ議員雀となると、みんな変に薄ぎたなくなってしまうのと同じようなものだろうか。