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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Read ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) by 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,905 characters · 262 screens
しかも余りに楽しそうな彼らをうらやむわれわれ仲間があると、
「そりァこんなのん気そうなわたしらだって、なかなかこれで……人間のいたずらこそ里ほどではないにしろ、同類でいながら鷹や鷲のような猛禽どもには、空から睨まれ通し、おこじょなんていう悪賢こい四ッ足小僧には、大切な愛の巣までつけねらわれて、うっかり子供の食べ物集めにも行けやしない……まったく油断もスキもなるものかネ、ここでもやっぱり、浮世の苦労は絶えやしないよ。
けれど、それも先様が生命の糧とあれば、どうするわけにも行かないどころか、考えて見ればわたしら自身、あなた方植物の大切な種を拾ったり、罪もない昆虫まで餌食にするのだもの、そうそう身勝手な苦情ばっかり、言えた義理ではなかろうよ。まア辛いことはお互さまとしたら……また、これ以上せいせいした住み心地なんて、さてどこへ行ってみようと、この地上では、とてもありっこないと思うね。それがわたしらの故郷なんだよ。
おこじょの挿図
こんな風に、彼らはしみじみ述懐している。これが雲外万里の放浪児で、いたって世間の広い彼らの言い分だけに、事実ここが彼らの本当の故郷だからと言って、よくある、気の狭いお国自慢とは、おのずから訳がちがうだろうではないか。