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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
Read 三国志(七) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.
N1 · advanced · modern kanji and kana · 371,916 characters · 744 screens
人々の眼は、しだいに血走ってきた。しかしなお石陣の外へは出られなかった。
すると、一人の白髪の翁が、ふと前に立って、にやにや笑った。何者かと訊けば、
「自分は諸葛亮の舅黄承彦の友で、久しくこの先の山に住んでいる者なり」という。
陸遜が礼を篤うして道を問うと、
「多分、お迷いになっているものであろうと思い、山を降りてこれへ来ました。さあこうお出でなさい」
杖をひいて、老翁は先に立った。
苦もなく陸遜とその部下は八陣の外へ出た。
「さようなら。――てまえが八陣の内からあなた方を出してあげたことは、誰にもいわないで下さい。孔明の舅にあたる黄承彦にわるうございますからね」
白髪の翁は、そういうと、飄々杖を風にまかせて、暮靄の山へ帰ってしまった。
「獲物を追う猟師山を見ず、陸遜たる者が、これまで深入りして来たのは大なる過ちであった。そうだ、わが軍はこれ以上進むべきではない」
どう考えたか、陸遜は急に、全軍へ令して、飛ぶが如く、呉へ引き揚げてしまった。
孔明を呼ぶ
一
蜀を破ったこと疾風迅雷だったが、退くこともまた電馳奔来の迅さであった。で、勝ち驕っている呉の大将たちは、陸遜に向って、