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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens
本来、蛾次郎は泣いても吠えてもここでその首を、侠党の士にもらわれなければならないのであるが、独楽の由来の話から、いくぶんその情を酌量されて、宮内の命乞いにその首だけはやっとつながった。
そのうちに神官のひとりが、どこからか、ふたりの丈に合いそうな着物をもらってきてくれた。なにしろ、衣服がぬれていては、山を下りるにしても、とちゅうの寒さにたえられない。
「さあ、着るがよい」
裾のみじかい着物と膝行袴が、一枚ずつ公平にわたされた。あのおしゃべりの蛾次郎も、口をきく元気もなく、ただいくつもおじぎをつづけて、ぬれた着物をそれに着かえた。
すると――そのようすを、研ぎすましたような眼ざしで、ジーッと見つめていた巡礼のお時が、とつぜん、気でも狂ったように、
「オオ、おらの子だ! おらの子だ!」
と、おどろく蛾次郎の首根ッこにかじりついて、人まえもなく、ワッと声をあげてうれし泣きに泣きたおれた。
宮内も、がくぜんとそこへ飛びよって、
「お時さん、どうして? どうして?」
人ごととは思えないで問いただした。
「灸がある! 灸がある! これ宮内さま、この子の背なかを見てやってください。