Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens

Aozora Bunko

「なにを気を呑まれているか! 意気地なしめ!」

ふいに、そのなかで、思いだしたようにどなったのは轟又八。

「すこしもはやく、水道門の堰をきって、間道のなかへ濁水をそそぎこめ、さすれば、いかなる天魔鬼神であろうと、なかのふたりが溺れ死ぬのはとうぜん、しかも、味方にひとりの怪我人もなくてすむわ」

あっぱれ名案と、誇りがましく命令すると、手下どもが、おうと答えるよりはやく、

「いや、そりゃ断じていかん」

はげしく異議を申したてた者は、軍師丹羽昌仙であった。かれとは、つねに犬と猿の仲みたいな轟又八、すぐ眉をピリッとさせて、

「こういうときの用意のため、いつでも水道門の堰さえきれば、間道はおろか裾野一円、満々と出水になるようしかけておいた計略ではないか。軍師には、なんでお止めなさる」

「おろかなことをお問いめさるな、それ、溺兵の計りごとは、一城の危急存亡にかかわるさいごの手段、わずかふたりの敵をころすために、なんでそれほどの費えをなそうや」

「心得ぬ軍師のいい条、では、みすみす間道門をやぶられて、ここにおおくの手負いをだすとも、大事ないといいはらるるか」

「なんで昌仙が、それまで手をつかねて見ていようぞ、拙者にはべつな一計があること、又八どのは、それにてゆるりとご見物あるがよい。