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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens
人の蛇形陣が、嵐のごとくまっしぐらに、こなたへさしてくるのが見えだした。
八風斎は、ぎょっとして、さけんだ。
「蛾次郎、蛾次郎、すがたをかくせ、早くかくれろ」
「え、え、え、なんです。親方親方」
「バカ! ぐず――見つかっては一大事だ、はやくそこらへ姿をけせ」
「ど、どこへ消えるんで? ……」
と、不意のできごとに、蛾次郎は、度をうしない、まだうろうろしているので、八風斎は、「えいめんどう」とばかり、かれをものかげに突きとばし、じぶんはすばやく、かたわらの松の木へ、するするとよじ登ってしまった。
ふたりが、からくも、すがたを隠したかかくさないうちである、八風斎の目のしたへ、潮の流れるごとき勢いで、さしかかってきた蛇形の行軍、その人数はまさに四百余人。みな、一ようの陣笠小具足、手槍抜刀をひっさげて、すでに戦塵を浴びてるようなものものしさ。
なかに、目立つはひとりの将、漆黒の馬にまたがって身には鎧をまとわず、頭に兜をかぶらず、白の小袖に、白鞘の一刀を帯びたまま、鞭を裾野にさして、いそぎにいそぐ。
「あ、あの人は見たことがあるぜ」
ものかげにいた蛾次郎は、目をみはって、その馬上を見おくったが、ふと気がついて、