Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens
まずそれまではご一身こそなによりの大事、かならず早まったことをなさらぬがようござる」
「お情け、かたじけのう思います」
正面にすわった僧形の貴人は、ことばすくなに沈んでいた。これ、はたして武田勝頼その人であるか否かは、あまりに、主客の対話がかすかで、にわかに判じがたいのである。しかし短檠の光に照らされたその風貌をみるに、色こそ雨露にさらされて下人のごとく日にやけているが、双眸らんとして人を射るの光があり、眉色うるしのごとく濃く、頬麗丹脣にして威のあるようす、どうみても、尋常人でないことだけはたしかである。
「とにかく、いちじこうなされてはどうであろう……」
晴季は、さらにいちだんと声をひくめて、
「嵯峨の仁和寺に、麿の親身な阿闍梨がわたらせられるほどに、ひとまずそれへお越し召されて、しばらくは天下の風雲をよそに、世のなりゆきを見ておわせ。そしてご武運だにあらば、機を待ってまたの大事をお計りなさるのがなによりの万全じゃ。……晴季はそう思うが、御意のほどはどうおわすの?」
「しごくなお計らい……いまの身になんのかってな我意を申しましょうぞ。よろずとも、よろしきようにお願いするばかりじゃ」