Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens

Aozora Bunko

ところへ、バタバタと早運びの足音がひびいてきた。フト見ると、加藤虎之助、はるかにはなれて具足の膝を地につかえる。

「お上」

「ウム、虎之助」

「近江路へやりました井上大九郎、その他の者、ただいま武田伊那丸をご陣屋まで召しつれましたが」

「や、帰ってきたか。ウム、伊那丸も同道して。――そうか。では表陣屋西幕のうちに床几をあたえて、鄭重におとりなし申して置くがよい」

これだけの言葉をはくうちに、秀吉は、肌着小手脛当をピチンと着けて、皆朱碁石おどしの鎧をザクリと着こみ、唐織銀文地に日月を織りうかした具足羽織まで着てしまった。

そして鎧のアイビキ紐、草摺のクリシメ紐、陣太刀の緒と、端からキチキチむすんでゆく指の早さといったらない。まるで神技と思わるるくらいだ。もっとも秀吉ばかりでなく、およそ戦国の世に男とうまれ武士の子と生まれたほどの者は、みな、陣太鼓の音が三ツ鳴るあいだに、具足着こみのできるくらいの修養を、ふだんのうちにつんでいた。

「孫一」

武将いでたちとなると、秀吉の威風、あたりをはらって、日輪のごとき赫々さがある。

「はッ、御意は?」

「右陣にいる福島市松のところへ伝令せい! ただ今、武田伊那丸が見えたによって、あずけておいた一品、そっこくここへ持参いたせと」