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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Read 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 511,765 characters · 1011 screens
と、つッこんだ。
卜斎、カラカラとあざ笑って、
「お若い! お若い! およそ築城の縄取りをなすにあたって、後方の破れを思わぬ者やあらん」
「しからば火攻の防ぎは」
「要所を伐林するまでのこと」
「樹木を伐るときは、城の血脈たる水の手に水がれのおそれがあろう」
「扇縄の一かくに、雨水をたくわえておくまでのこと」
「大夏の旱魃に、もし籠城となったおりは」
「掛樋をもってうら山より秋川の水をひくときは、城の水の手に水がれはござるまい」
「兵法にいわく、天水危城を保つべし、工水名城も保つべからず。――人体の血脈ともみるべき大事な一城の水を、掛樋でよばんなどとは築城の逆法」
「いや、逆法ではない」
「逆法とぞんずるッ」
「貴殿の尊奉なさる越後の天鼓流では、まだ作事や築工に時勢おくれのところがあるゆえ、それを逆法と思われるかも知らぬが、自分の信ずる越前……」
と、いいかけて、卜斎、グッとつまった。
――越前北ノ庄の城をじっさいにきずいたわが八風流では! と、ここで卜斎、大見得をきっていばりたかったところなのであるが、なぜか、グッ……とまっ赤になって、絶句した。
それをいうと、柴田勝家の遺臣という、自分の前身が暴露する。