Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
「おい、戦場だぞ」彼は自分に云った、「しっかりしろ得石、ここは関ヶ原だぞ、――これから一といくさ始まるんだぞ、しっかりしろ」
若い女中が酒を持って来、少しまをおいておときが来た。得石は手酌で飲んでいたが、おときが坐ろうとすると手を振った。
「云うにゃ及ぶだ、わかってる」と彼は手を振りながら云った、「二階の支度ができたんだろう、わかってるよ」
「二階へいらっしゃるんですか」
「いらっしゃるかって、――呼びに来たんじゃあないのか」
おときは燗徳利を持ち、口へ手を当てて笑いながら酌をした、「ごめんなさい、お伴れさまならお帰りになりましたわ」
得石の手が、酌をされた盃を持ったまま、動かなくなった。
「いけませんよ」とおときが云った、「あんな若いおきれいなお嬢さまをくどいたりなすっては、罪ですよ先生」
「帰ったって、――本当に帰ったのか」
「約束を守って下さらないからって」と云いながらおときは、おみのの盃を取って、冷えてしまった酒を飲み、その盃をさしだしながら云った、「一つ下さらない」
得石は自分のを飲み、おときに酌をしてやった。
「この次に知らせたとき、もし約束を守って下さらなかったら」