Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
そのときは半刻ほどで帰ったが、帰るときの彼は、泣いたあとのように、眼を赤く腫らしてい、睫毛も濡れていた。迎えたのも送りだしたのも、おまさという小女で、奥の女は姿をみせなかった。
「よく気をつけてあげておくれ」徳次郎はそう云って、紙に包んだ物をおまさに与えた、「また来るからね、頼んだよ」
おまさは、「はい」と云って、いかにも賢そうに微笑んだ。
二月になってまもなく、下谷へ用達にいった帰りに、徳次郎はまた明神下へ寄ってみた。すると、門柱に掛けてあった看板がなく、門も戸口も閉っていたし、勝手口の木戸にも外から錠がかかっていた。
「留守だな」と彼は木戸の外で呟いた、「二人ででかけたらしいな」
すると路地の向うから、「そこのうちは引越しましたよ」と云う声がした。振り返ってみると、十徳を着た白髪の、品のいい老人が、柾木の生垣の中からこっちを見ていた。生垣の手入れをしていたのだろう、片手で鋏の音をさせながら、暢びりした調子で、徳次郎に話しかけた。
「おとついの晩でしたかな、もう日が昏れてから急に引越してゆきました」老人は独りで頷いた、「おつきあいもなかったが、女世帯のようでしたな、いいえ、さっき差配が来て話してゆきましたが、ただ親元へ帰るというだけで、ゆく先もはっきりしなかったそうです、貴方はなにか、――」