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Japanische Klassiker mit Furigana

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やまとこじふうぶつし

大和古寺風物誌

亀井 勝一郎

Lesen Sie 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) von 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.647 Zeichen · 215 Bildschirme

Aozora Bunko

東塔は周知のごとく三重の塔ではあるが、各層に裳層がついているので六重の塔のようにみえる。そしてこの裳層のひろがりが塔に音調と陰翳を与えている。白鳳の祈念に宿る音楽性はここにもうかがわるるであろう。この日は空がよく晴れていて、天平雲は望むことは出来なかったが、松林の緑を透して射しこむ夕日に、塔が紫色に映えて、裳層の陰翳も一入深く仰ぎみられた。

だがそれにもまして驚嘆したのは夜の塔であった。月光を浴びて瓦は黄金の光りを放ち、各層は細部にいたるまで鮮かに照り映えて、全体が銀の塔と見まちがうばかりである。満天の星屑を背にそそり立つ荘厳の姿は、私がこの世の中でみた最も美しい状景であった。九輪の尖端には水煙と称する網状の金属の飾りがついているが、この水煙には飛行奏楽する天女の一群が配してある。月光のため白銀の炎のようにみえるその頂上のあたりには銀河がゆるやかに流れていた。天女の奏でる楽の音が聞えたという伝説を残してもよかろう。夕暮の塔をはるかに慕いつつ、やがてその下に立って月夜の姿を仰ぐまでのこの時間を、私は人生の幸福とよんでもいい。少くとも私の半生において最も幸福な刹那であった。