Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lesen Sie 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) von 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.647 Zeichen · 215 Bildschirme
災厄に殉ずるのが仏ではないか。歴史はそれを証明している。仏像を単なる美術品と思いこむから疎開などという迷い言が出るのであろう。そう思ったので僕は反対したのである。
天平の東大寺は平重衡の兵火にかかって、けなげにも焼けて行った。大仏も観音も弥勒も劫火に身を投じた。これが仏の運命というものではなかろうか。何を惜しむ必要があろう。惜しむのは人の情であるが、仏は失うべき何ものをも有せざるが故に仏なのだ。夢殿や法隆寺に蔵されている多くの尊い古仏が、爆撃の犠牲になるのは実に痛恨事にちがいないが、だからと云って疎開を考えるのは、信仰にとって感傷的なことではなかろうか。仏の心に反する行為にちがいない。そう思って、僕はただ堪えることを考えていた。無慙な壊滅に堪えうるかどうか、それはわからない。しかし一心に念じて、惨禍の日を忍ぼうと覚悟していたのである。
今となればこうした思いも杞憂にすぎなかったが、しかしこの思いを僕はいまなお捨てない。同じ思いで平和の日も貫きたいのである。幸いにして大和の古寺は残った。だが「幸いにして」という言葉はいまの自分にはいささか複雑だ。そこを訪れる僕らの心は、昔日にもまして重いであろう。