Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
「夫婦となればね」と彼はまた云う、「亭主が女房の物を洗うのは情愛ってもんで、悪口を云う人もあるようだが、それはいらねえお節介、羨みのあげくのそねみてえものさ」
かみさんたちの怒りは頂点に達した。自分たちの評を「羨望のあまりのそねみ」だと、面と向って云われようとは思わなかったし、そんな暴言を聞いた例もないし、さらにがまんがならないのは、それが「事実」だったからである。かみさんたちは徳さんのことを男の屑だと罵り、かの袋の中身はきんどころか銀でも鉄でもなく、どぶ泥でも詰っているのだろうとわらった。
徳さんはなんと云われても平気だった。こんなにいい女房をもてば、悪口を云われるくらい当然のことだ、と自認していた。彼はこの「街」ではたんば老人ともっとも親しくしていた。たんば老人だけは、彼の話をまじめに聞いてくれるし、ときたま困って少額のむしんをすれば、こころよく貸してもくれるのであった。しぜん、新妻くに子の自慢がしたくなると老人のところへいってたっぷりと話して聞かせる。
「じつに信心ぶかいやつでね」と彼は老人に云う、「寝る段になると毎晩その、蒲団を敷く向きでひともんちゃくさ、初めはあっしもめんくらがっちゃったね、なにしろ蒲団を敷く段になったとき、いきなりあっしの顔を見て、帝釈さまはどっちの方角に当りますかって云いだし