Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
馬子唄に唄う、
浅間さんなぜ焼きやさんす
裾に十七持ちながら
の唄で知られる宿場遊廓の、古い大きなもう滅びて誰も住んでいない建物の前を過ぎて行くと宿のはずれであろうと思うところで、村役場の看板を発見した。門から覗いてみれば、小使室らしい爐のなかで、榾火があかあかと照っている。しめた、と思った。
そこでまた、銀平の決心を促すことになったのである。けれど、一番若い銀平ばかり苛めるのは、いけないということになった。そして、三人一緒に小使室の土間へ入って行って、私が小使さんに訳を話して、
春の川 鰔むらがり 遡りけり
と、書いてある短冊を出した。小使さんは、それを受け取りながら、ひとりごとのように、
『こんなのが、この頃よくくるなあ――』
と、呟いて事務室の方へ持って行った。事務室は、暗いが誰かいるとみえる。
しばらくすると、事務室の窓の硝子戸が開いて声がした。
『君たち、こっちへきんさい』
と、呼ぶのである。私たちは、開いた窓の下の庭に立った。窓を見上げると、窓の暗から手が出て、
『これを持って行き給え』
と、言う。
『どうも、ありがとうございます』
玉汗が右の手を差しのべると、暗から出た掌が開いて、光るものが玉汗の掌へ落ちた。